2013/01/07.Mon

年頭所感

半月以上更新が滞った。

その理由は
1.冬眠していた。
2.起きていたが、ボケていた。
3.研究会が消滅していた。
上記のいずれでしょうか?

1と2はどちらも正解。
3については、不正解。
その証拠に、岩手林業新報1月1日付に以下の記事が載りましたので、林業新報さんの許可をいただき掲載します。
代表が原稿用紙4枚にわたり、書き綴ったものです。(数字が全て漢数字に化けました。直す気力がない。お許しを。)
長文ながら読みやすいのでお付き合いください。



新年のごあいさつ
        岩手・木質バイオマス研究会代表 伊藤幸男
 新年あけましておめでとうございます。仮設住宅で新しい年を迎えられた皆様、あるいは震災以降様々な困難のなかにおられる皆様におかれましては、本年がよりよい年になりますよう心よりお祈り申し上げます。
 さて、昨年、当研究会は次のような活動を実施いたしました。一つは、「つながり・ぬくもりプロジェクト」の一環として、陸前高田市や大槌町の仮設住宅集会所に計三台のペレットストーブを寄贈させていただきました。もう一つは、岩手大学が助成を受けた三井物産環境基金の事業と関わって、沿岸地域を中心に木質バイオマスセミナーを多数開催し、木質バイオマス利用の普及啓発に努めました。これらの活動は本年も引き続き取り組んでいく予定です。
 ところで、昨年は木質バイオマスにとって、あるいは林業にとっても大きな転換点となる年となりました。それは言うまでもなく、昨年七月に再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)が施行されたことです。FITの施行に際しては、木質バイオマスに関わる識者や団体が慎重な制度設計を求める提言を行いましたが、結果的には燃料の由来別に買取価格が設定されるにとどまり、発電の規模や熱利用の有無などについては考慮されませんでした。これにより、一定以上の発電効率を見込める五〇〇〇kW以上の熱利用を伴わない発電所の建設が全国で多数計画されつつあります。
 当研究会は、一昨年、地域の自立と木質バイオマス利用の地域経済への波及効果を重視した政策提言を発表しましたが、その視点からは地域社会への十分な配慮が欠けていると思われる計画も見受けられ、木質バイオマス利用の量的拡大を単純には喜べない状況も生まれつつあると認識しています。ここでは、改めて政策提言の視点を踏まえて、「熱利用を伴わない木質バイオマス発電」の抱える課題について整理してみたいと思います。
 課題の一点目は、熱利用を伴わない発電は熱力学的にエネルギー損失が多すぎるということです。ランキンサイクル発電(蒸気タービンによる発電)は一般に規模が大きいほど発電効率が高いとされていますが、最大でもその効率は三〇%程度と言われています。発生するエネルギーの七~八割は熱となり、それを利用しない場合、大量のエネルギーを捨てながら発電することになります。例えばドイツでは、(そもそも木質バイオマスの多くが熱として利用されていますが)熱利用の有無で買取価格に差をつけることで高効率の熱電併給施設へと誘導しています。その結果、熱利用を伴わない木質バイオマス発電のプラントは一カ所も存在しません。木質バイオマス利用の活発なスウェーデン、フィンランド、オーストリア、ドイツといった国々では、森林の生長量の六割から八割を収穫しており、低効率な利用を許す余裕がないという事情もあります。しかし、経済的に見ても、木材の価値の七~八割を捨てながら行う生産、つまり歩留まり二~三割の生産体制が、事業者の経営にとっても地域にとっても持続的なものであるかどうかは答えを待たないでしょう。現在計画されている事業が、FITによって一時的に成り立つものにすぎないのか、それとも二〇年間の買取期間を終えた後も事業性を保ち経営が継続されるのか、という点に注意を払っておく必要があるでしょう。
 二点目の課題は、発電による大規模な木材需要の発生に対し、地域林業はそれに応えられる生産力と生産性を持ち合わせているのかということです。例えば、五〇〇〇kW級の発電所の場合、必要とされる燃料は約六万トン(湿潤基準で含水率四〇%の場合)、材積ではスギの場合一〇万m3あまりになるとされています。岩手県の二〇一一年の素材生産量は震災で落ち込んだとはいえ九八万m3ですから、上記の発電所が一〇カ所あれば消費できてしまう量です。たとえ一カ所であっても、林業の生産力が十分に向上していなければ、地域林業に大きな影響を与えることは言うまでもありません。
 燃料の安定供給に関わっては、もう一つ大きな課題があります。FITによる電力の調達価格は燃料の由来によって一kW時当たり、未利用木材三三・二円、一般木材等二五・二円、リサイクル木材一三・六五円(いずれも税込み)となっています。林業界が期待するのは未利用木材として買い取ってもらうことですが、林野庁のガイドラインによると、未利用材として認められるのは、①間伐材(材積に係る伐採率が三五%以下)、②森林経営計画の対象林・保安林・国有林から生産された木材のいずれか、となっています。しかし、今後間伐の補助対象となるためには森林経営計画の認定を受ける必要があることから、民有林においては事実上森林経営計画の認定を受けていることが未利用木材として認証される条件となってきます。これが三つ目の課題です。例えば、年間一〇万m3の間伐材を集荷しようとした場合、仮に一ha当たり五〇m3間伐できるとした場合(岩手県の平均は二〇一一年で二一m3/ha)、そのような森林が二〇〇〇ha必要となります。二〇年間では四万haとなり、同じ森林で二回間伐出来るとしても、発電所の周辺で二万haの間伐対象林が森林経営計画の認定を受ける必要がある、という計算になります。森林経営計画の認定を受けた森林からは間伐材であることの縛りはなくなりますが、いずれにしても未利用木材を一〇万m3集めることの困難さは変わらないでしょう。こうしたことから、未利用木材への過度の期待はリスクがあり、当面は林業界の期待とは裏腹に一般木材等やリサイクル木材を利用しながらの発電になるのではと予想されるのです。
 ここでまでは、発電事業に関わる課題でした。次に地域経済に関わる課題について整理してみましょう。四つ目の課題は、発電事業によって得られた利益の行き先についてです。木質バイオマス発電はコストに占める燃料費の割合が高いため、他の自然エネルギーに比べ地域経済への波及効果は高いと考えられることは幸いな点です。この他に地域に還元されるものとして固定資産税がありますが、これは減価償却によって年々減少していきます。もし、本社を当該地域に置けば、法人税が地域に支払われます。さらに、市民出資や地元銀行の出資が加わると地域に還元される利益の割合はさらに増えるはずです。しかし、建設に数十億円を要する事業は、一方で大きなリスクがあり、それを引き受けられる地域資本は限定されるでしょう。もし、単なる企業誘致に終わってしまうなら、私たちは大量の地域資源をつぎ込みながら大きな果実を得られないということは知っておく必要があります。
 五点目は、木質バイオマスエネルギーを利用することが化石燃料の純減につながっているのかということです。化石燃料の削減は、環境的にも経済的にも木質バイオマスエネルギーのもたらす最も大きな効果です。二〇一一年の政策提言でも触れていますが、岩手県における灯油・A重油の販売額(二〇一〇年度で四六六億円)は米の産出額に匹敵しています。あるいは、農林水産政策研究所の澤井氏らの研究によると、西和賀町二三〇〇世帯の五割が薪ストーブを導入すると、灯油の購入費が年間八〇〇〇万円から一億円削減されるとしています。現状では、それほどの対地域外支出があると言うことです。化石燃料への支払いを削減させることは、一般家庭においては相対的に所得が増加したような効果を与え、一方で、薪などの木質バイオマスへの支払いは、高い割合で地域に還元されるため、見かけよりも大きな効果を生み出すと考えられています。欧州での木質バイオマス利用が熱利用を中心に展開していったのは、エネルギー効率の高さだけでなく、そうした波及効果の高さに注目しているからなのです。化石燃料の純減を伴わなければ、木質バイオマス利用によって得られる波及効果は半減してしまうと言っていいでしょう。
 最後の課題として、木質バイオマスを含む自然エネルギーの導入に際し、民主的なプロセスを経ているのかという点を挙げておきたいと思います。自然エネルギーとは単なる代替エネルギーではなく、地域の社会経済を支える地域エネルギーです。平時においても非常時においても、地域社会を安定させ動揺を最小限にするための優れた道具立てとして期待されています。そのことは、どのような地域社会を作っていこうとするのかという、地域づくりや地域自治と不可分なものだということを示しています。自然エネルギーの導入は、地域住民の生命と財産に関わる問題として、地域住民の一人一人に関心を持ってもらい関わってもらうというプロセスが大変重要です。民主主義が成熟した国々で自然エネルギーの普及が進んでいることは、決して偶然ではないのです。
 自然エネルギーの本質とは、競争によって様々な問題を抱え行き詰まっている市場経済を、環境的にも経済的にも調和や共生に向かっていくグリーン経済へと導くことです。具体的には、より富める者へと集まっていくマネーの流れを地域や地域住民に引き戻す経済を作ろうということです。そのためには、地域や地域住民の生活に即したところから自然エネルギーを導入していくことが大切で、木質バイオマスにおいては、小規模分散型の熱利用が最も合理的で最も優先されるべき取り組みだろうと思われるのです。
 こうした等身大の木質バイオマス経済が、岩手県をはじめとする東北にいち早く開花することを年頭の願いとしたいと思います
ジムキョク | Comments(0) | Trackback(0)
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